著:クラウディア・ハモンド 訳:木尾糸己
久しぶりの読書感想です。
お金に対峙した時の人間心理の性質について色々な角度から、研究結果を元に書かれた名著です。
参照論文の多いこと。
僕はこの本を日常生活やビジネスにどう生かせるかという視点で読んでいました。
気になったところを取り上げつつ、感想を論じていこうかなと思います。
人は死を思うとき、お金を使うことより持っていることで慰められる。
MIND OVER MONEY
これは意外でした。
お金はあの世に持っていけないのだから使い果たして死にたいと思うものなんじゃないだろうかと思っていましたが、逆なんですね!
死を想うと貯金が増えるという研究結果もここから来るのでしょう。
お金が安心の象徴として機能するのでしょうか。
クレジットカードで何かを買う時、ATMで同じ金額を引き出すところを想像する。そして、キャッシュで支払ってもいいと思える時だけカードで支払うようにする。
MIND OVER MONEY
現金の魔力とでもいうべき性質ですね。
手元の現金を使うことによって、痛みを感じます。しかし、クレカやキャッシュレスの決済ではその痛みが薄らぎ、お金を浪費しやすくなると言われています。
そして、現金を使用しない買い物では、食品を買うとき不健康なものを買ってしまう割合が増えるということも分かっています。
現金が使用されない社会になってきた場合は預金残高の数字がその役割を担ってくるのかもしれませんが、現金になじんだ僕らの世代が現役でいる暫くの間は現金の魔力を上手く使って自分を律していくこと、ビジネスに活用することが有用であり続けるのだろうと思います。
そして、無駄遣いを減らすための工夫の一例が冒頭の現金を意識する戦略です。
金銭の交渉するときは、アンカーを設定しておく(即決ライン、最低ライン)
MIND OVER MONEY
全く根拠のない無関係な数字でも意識に触れさせると、金額の相場が定まっていない場合などに、その無関係な数字を起点として金額が引っ張られるという面白い性質があります。
そして、交渉をする場合、いくらだったら即決するかというラインと、買う場合の最高価格・売る場合の最低価格の譲れないラインを予め決めて臨むと良い交渉が出来るようになります。
ビジネスでは大事になりそうなので心に留めておくことにしました。
人にはそれぞれ、懐事情に見合った出費とはどういうものかについてはっきりした考えがあり、貧しい人が贅沢品に属するものを買いながら必需品が買えないと聞くと、格別にカチンとくる。
MIND OVER MONEY
いつぞやの生活保護受給者の減額に対する不満に対して非難が殺到した話はまさにこれですね。
ミリオネアになったとしたらお金で買える最高のものに飛びつくのは間違い。
MIND OVER MONEY
そうすると日々の楽しみが比較の上で色褪せて見える。
であれば、小さな楽しみをたくさん買う方が良い。また、一番楽しいことに集中すれば、人生をより楽しみやすくなる。
お金の使い方の金言みたいだなと思いました。
お金持ちになると、散財が増えて、更にその消費になれてしまい、どんどん出費を増やして資産を食いつぶしてしまうとは、よく聞く話です。
お金を使うのは気晴らしにもなり、買った物や経験から得られる幸福は確かにあると思いますが、使う金額と幸福は比例すると思わないこと、買いたくなったら大事な仕事を一つするといったようなif thenルールを設けてモチベーションの原動力にする、買いたい気持ちを先延ばしにして楽しみにする時間を長くとる、など消費から得られる幸福感を最大化するテクニックを駆使してコスパを上げるという考え方も大事になってくるんじゃなかろうかと思いました。
お金は大事だし、出来る限り貯めて楽に生活したいと常々思っていますが、「お金について意識すると人は利己的になる」といった罠もあり、上手にお金と付き合っていきたいと思いました。