Kanchan(@kanchanblog)です。
今回はフリーランス医師になった時に、選ばなければいけなくなる健康保険、年金についてのお話です。
常勤で勤務している間は天引きされていて、意識することすらしなかったかもしれません。
殆どのフリーランス医師の場合、健康保険は直近の職場の任意継続保険、国民健康保険、医師国保(日本医師会員のみ)から選ぶことになるでしょう。
年金は国民年金か医師年金(日本医師会員のみ)ということになりそうです。
各地区によって異なる点も多く、流石に網羅出来ませんが調べてみた内容をまとめておきたいと思います。
自分で納めなければならない社会保険料で「不意打ち」を受けないようにイメージしておきましょう。
医師としてフリーランスを検討している人
健康保険、年金が安く出来ないか知りたい人
フリーランス医師に興味がある人
重要ポイント
家族持ちのフリーランスにとって、気をつけなきゃいけない重要ポイントが「扶養」の問題。
国民年金も国民健康保険も、医師版国民健康保険組合である医師国保(医師会会員のみ)も、基本的には扶養という考えがありません。
妻も子供も一人は一人。
人数分だけ加算されていきます。
このことを初めて知って、計算してみたときは絶望しました。
会社折半の分も負担する程ではありませんが、保険料は増額になる人が殆どかと思います。
任意継続保険を除いては。
おすすめ健康保険
一番お勧めな健康保険は、任意継続保険です。
常勤を退職した日から20日以内に申請することで、前職場の健康保険を2年間利用できる制度です。
扶養も継続することが出来ますし、独り身でさえも保険料はほぼ確実に最安値になります。
標準報酬月額で保険料が決まっていますが、上限となる金額が設定されていて、多くの医師は上限に達し、それ以上は上がらなくなるからです。
前年が年収1200万位の平均的な勤務医だったなら、扶養も継続して世帯で年40万円前後の保険料で済むと思います。
福利厚生も引き継いで使えます。
健康診断を自分で受けなければならなくなるので、健診に補助が出るのかどうかも重要なポイントです。
メリットが大きい保険ということもあってか、申請が1日でも遅れたら加入できなくなる、保険料滞納が一回でもあったら脱退になる等厳しいルールが設けられています。
2年間目一杯任意継続できるように頑張りましょう。
任意継続保険終了後の保険の比較
3年目から国民健康保険か、医師国保かの選択に迫られることと思います。
どちらも養う家族が増えるほど、保険料が増えていきます。
表にして比較していきます。
医師国保は県によって異なる運用になっているので、公開されている東京都と埼玉県の医師国保を比較してみました。
2021年度 | 国民健康保険 | 東京都医師国保 | 埼玉県医師国保 | |
保険料 | 単身 (40歳未満) | 年82万(上限額) | 月32500円 年39万 | 月36700円 年44万 |
単身 (40歳以上) | 年99万(上限額) | 月38000円 年456000円 | 月42700円 年512400円 | |
+家族1人 (40歳未満) | +2~3万(市町村による) 上限額ならゼロ同然 | 月12500円 年150000円 | 月11000円 年132000円 | |
+家族1人 (40歳以上) | +3~4万(市町村による) 上限額ならゼロ同然 | 月18000円 年216000円 | 月17000円 年204000円 | |
ケース① | 妻1人扶養の 場合 | 82万(全員40歳未満) 99万(1人でも40歳以上) | 月4.5万(5.6万)* 年54万(67万)* | 月4.77万(5.97万)* 年57万(72万)* |
ケース② | 妻+子供1人の場合 | 82万(全員40歳未満) 99万(1人でも40歳以上) | 月5.75万(6.85万)* 年69万(82万)* | 月5.87万(7.07万)* 年70万(84.8万)* |
ケース③ | 妻+子供2人の場合 | 82万(全員40歳未満) 99万(1人でも40歳以上) | 月7万(8.1万)* 年84万(97.2万)* | 月6.97万(同8.17万)* 年83.6万(同98万)* |
健診補助 | 40歳未満 | 35歳以上なら 人間ドックに2.5万前後 | 30歳以上なら 乳腺エコーに5千円 | 35歳以上なら 人間ドックに5千円 |
40歳以上 | 人間ドックに2.5万前後 脳ドックに2.5万前後 特定健診0~1,000円 | 脳ドックに15000円 特定健診無料 | 人間ドックに5万円 脳ドックに3万円 特定健診無料 | |
傷病手当 | コロナ限定 | 1日5千円 | 1日5千円 | |
出産手当 | 42万円 | 45万円 | 本人60.4万 家族45.4万 |
女医さんは妻→夫と読み替えて下さい。
医師バイトを少しでもしていると年収1200万は軽く超えてしまうでしょうから、国民健康保険は上限82万円(40歳以上なら介護保険料が加わり99万円まで)に達すると思います。
対して医師国保は、収入によらず定額の保険料になっています。計算上は妻一人、子供二人の我が家のような四人家族のケースで、国民健康保険の上限額と同等になりそうです。
そして忘れてはいけないのが、医師会に支払う年会費。
日本医師会は医賠責保険込みですが年会費68000円もかかってきます。更に都道府県医師会、地区医師会もセットで加入しないといけないため、合わせて年10万円以上かかります。
医賠責保険を差し引いても、6万円以上は医師会コストがかかりそうです。
医師国保が国民健康保険に勝るのは扶養2人(子供1人)までと試算できました。
国民健康保険に(コロナ以外の)傷病手当がないことも気になりますが、そこに年10万払えるか?考えましょう。
障害を負ったなら国民年金の方の障害年金は貰うことが出来ます。
少額の補償には貯金で備えるのが適切です。不労所得の構築自体が保険となるでしょう。
人間ドック補助については、調べたところでは2.5万円程度の補助が出ていましたが地域によってなかったり、額が小さかったり、特定健診だけだったり、まちまちでした。
「オプション」ではなく保険料と総コストで判断するのが良いと思います。
保険料の変遷
とある医師国保は10年前一人当たり年312000円、家族一人当たり年66000円でしたが、
5年前には一人当たり年374400円、家族一人当たり年146400円
今年度一人当たり年440400円、家族一人当たり年132000円。個人41%、家族100%の伸び率でした。
国民健康保険(医療分)の上限額は平成23年度65万円から平成28年度77万円、今年度82万円と26%の伸び率です。
医師国保の保険料の値上がり率が高く、割安率は縮小してきています。
家族の保険料を合わせると高くなる傾向が続くのでしょうか。要チェックです。
低収入になったら
東京や埼玉のように医師国保では収入が低くなった時、保険料が下がらない場合があります。(所得に応じて安くなる県もあります)
この点はFIRE後の生活設計を考えると、マイナスポイント。
ここでも国民健康保険に分がありそうです。
健康保険まとめ
まとめると、
退職後2年間は任意継続保険が一番お得。その後、
年収一千万以上稼ぐなら、四人家族以上なら国民健康保険、三人家族以下なら医師国保の方が得になることが多い。
収入を減らすつもりなら国民健康保険がお得。
傷病手当、人間ドック補助の「オプション」を重視する場合は都道府県次第。
対象年齢、補助の有無は都道府県によってまちまち。
(自分は国民健康保険を選びました。)
年金について
年金は国民年金か、医師年金に加入することになるかと思います。
国民年金 月額16610円×12=年額199320円が夫婦2人分かかって約40万円(2年分前納で14590円引き可)
医師年金は日本医師会にかかる年会費と、月12000円、年132000円×成人人数分かかります。
給付額を上げたいなら年金基金に一口6000円単位で毎月積み立てることも可能です。利回り1.5%とかなのでそれだけなら自分で運用すれば良いやと思いますが、年金は万が一の時、障害年金、遺族年金が給付されるという保険も兼ねています。
なので最低限の基礎年金は入っておく価値は十分あると思います。
医師国保にするなら医師年金、国民健康保険なら国民年金が良いかなと思います。
医師国保は保険料が高いため、65歳まで医師であり続ける確率が高いと思えたら選ぶという判断もありますね。
フリーランス医師4人家族の例
週4日間平均的な日当8万円のバイトで収入を確保出来たとしましょう。
ざっくりと年収は1600万円になります。
所得税236万円を源泉徴収されて、1364万円振り込まれてきます。
健康保険に82万円、国民年金に40万円、住民税118万円の合計240万円は自分で支払うために確保しておく必要があります。40歳代になったら257万円です。
毎月20万円ですから、結構な金額ですよね。
これが払えないカツカツの生活をしてしまうと追徴課税の憂き目をみることになります。
そこまでいかなくても「見かけ上の貯金」と「真の貯金」を見誤ると、思ったより貯まっていない事態になります。
貯蓄率20%が意外と簡単ではないと思えてきます。
フリーランスになって、手取りが増えたと勘違いしてしまわないために社会保険料(健康保険+年金)については念頭に置いておきましょう。
結論
保険料をいくら支払おうと受けられるサービスは同じというのが国民皆保険制度における健康保険です。
保険料は安いに越したことはありません。
単身であれば医師国保
家族が2人(子供1人)までは医師国保
家族3人(子供2人)以上は国民健康保険
医師国保に上限が設定されている場合はこの限りではありませんが、医師会費等を加えるとこの結論はなかなか覆らないかなと思います。
年金は医師国保にするなら医師年金、国民健康保険なら国民年金が良いと思います。
医師国保は都道府県による違いが結構あるので、最終的にはご自身の入れる医師会の制度をチェックしてみて下さい。
参考にして頂ければ幸いです。