読書

【読書感想】予想どおりに不合理【ネタバレあり】

著:ダン・アリエリー、訳:熊谷淳子

行動経済学と心理学の本。研究結果に基づいており、信憑性は折り紙付き。

人間の性質について面白く、かつ分かりやすく書いてあり、あっという間に読めてしまいました。

話のタネにするもよし

自分のビジネスへの応用を考えてみるもよし。

文庫本で安くなっており、値段以上の価値があることは間違いないと思います!

相対性の真相

相対性は身の回りのどこにでもあり、わたしたちはあらゆるものごとを相対性の色メガネで見ているのだと自覚すること

日常で一番意識することが多く出てくるのはこの章だと思いました。

人は周りと比べて評価をしたり、一喜一憂してしまう生き物。

並寿司より上寿司を注文させたいと思ったら特上寿司をラインナップに入れろと言う話。

異国であった同郷の人との話はすごく盛り上がるが、帰国して会ってみると幻滅するという話。

おとり選択肢に明らかに勝る選択肢があると、ベストな気がして選んでしまう。

あるあるの連発で、面白過ぎました。

需要と供給の誤謬

トムは人間の行動の偉大なる法則を発見した。人に何かを欲しがらせるには、それが簡単には手に入らないようにすればいい。

値段のないものに最初に付けた値段がアンカーとしての役割を果たし、今後、そのものの価値判断の基準になってしまうという話。

価値のない石だった黒真珠を希少価値の高いものとして売り出すことで大もうけした商人の話が例として出ていました。

需要と供給で決まる市場価格も、起源を辿っていくと誰かが作為的に付けた値段との比較だったりする。

これもビジネスに生かせそうな話です。

社会規範のコスト

男は社会規範(交際)と市場規範(セックスにかかる費用)の折り合いをつけるのに苦労しはじめた。社会規範と市場規範を混同してはいけない。混同すれば女性を売春婦呼ばわりしていることになるのだから。”一番高いセックスは、無料のセックスだ”

友達の手伝いのお礼にお金をもらう(それも微妙に少額な)と、市場規範で考えるようになってしまって、モヤモヤする。そんな経験ありませんか?

企業は、従業員に対するときも顧客に対するときと同じくらい、相手が態度で示す長期的な検診を把握しなければならない。もっと熱心に働くと約束したり、従業員にいまから飛行機に乗って会議に出席してくれといきなり頼んだりした場合、何か同じような見返りを渡すべきだ。

お金が絡んでくると、市場規範が優先され、その後仕組みを戻しても、道徳や倫理観で考える社会規範は簡単に戻ってこないという話は、外出先の店や宿で偉そうにしている残念なお客さんを減らすためにも、応用できるんじゃないかと思いました。

高価な所有意識

何かを手にしたとたんに愛着を感じはじめる
これから手に入るものより、失うもののほうに注目する
他の人が取引を見る視点も自分と同じだと思い込んでしまう

この法則があるから世の中には「売れ残り」が沢山あるのかもしれませんね。

持ち続けるコストも考えると少しは合理的に判断できるのかもしれません。

この呪縛から逃れるために筆者がしている提案は↓↓

あえて自分と目的の品物の間にある程度の距離を置いて、出来るだけ自分が非所有者であるかのように考える

扉をあけておく

無用の選択肢を追い求めたくなる不合理な衝動

ゲームでの実験で示された人間の性質。選択肢がなくなることを嫌がる性質があるというのは理解できます。

家電製品の延長保証だったり、電話やネットの加入時のみ割安で付けられるオプションなんかが身近な例ですね。

その選択肢を捨てて、専念すれば利益が最大化できる場面でも、選択肢を残すことに注力してしまう不合理。

仕事を辞めて履歴書に傷を付けたくない心理にも通ずるところがあるかもしれません。

予測の効果

知識が先か後かで経験が変わる

つまり、前もっておいしそうだと信じたときは、たいてい、やはりおいしいということになり、まずそうだと思ったときは、やはりまずいということになる。

予測は、人生のさまざまな領域において、わたしたちがものごとをどう経験するかという部分でとてつもない役割を果たしている。

こうしてみると、肯定的な予測は、物事をもっと楽しませてくれるし、まわりの世界の印象をよくしてくれる。何も期待しないことの害は、それ以上何も得られずに終わってしまうかもしれないということだ。

器や店の雰囲気で味が変わるという経験は誰しもあるのではないでしょうか?

また、情報も味覚を変化させる要素です。

そして、食べた後に情報が付け足された場合は、味の評価は変わらないという話も興味深い。

価格の力

この章は医療、プラセボについての話が豊富に出てきて、メモしまくりでした。

「プラセボ」は、「わたしが喜ばせよう」という意味のラテン語からきている。十四世紀には、葬式で死者のために泣き、涙を流す役に雇われた泣き屋を指す言葉として使われた。

これはトリビアですが、自分の中で80へぇ位行きました。

一般に、プラセボを働かせる予測は、二つの仕組みによってつくられる。ひとつは信念、つまり、薬や治療や世話をしてくれる人に対する信頼や確信だ。医師が特定の処置や治療に力を入れていればそれだけで良い結果が出るような気分になる。

「プラセボ力」はベテランの先生の方がありそう。経験が豊富なほど、患者さんから見て名医ということになるのかもしれません。

そして、進歩した現代医学でも尚、プラセボレベルしかない治療、看護、介護は残っていると思います。

この本でも述べられていますが、それが悪というわけでは決してありません。

プラセボも立派な治療だと思います。

一つ一つ本当に有効なのか、プラセボ効果だけじゃないのか、何かを妄信することなく自分で考える「知的謙遜」の姿勢が大切だと思います。

同じプラセボ薬でも高額な方が効く。

価格とプラセボ効果のこの関係は、全ての実験協力者で同じわけではない

より痛みを経験し、そのため、より鎮痛剤に頼った人では、価格とプラセボ効果の関係がより強調されていた

この人間の性質は、危うさをはらんでいると言えます。

高いプラセボを売りつけると、良く効いて、悪くない結果になりそうだということ。

わたしたちは値引きされたものを見ると、直感的に低下のものより品質が劣っていると判断する。

医薬品の広告表示が厳しくなって、難しくなるとは思いますが、商売の種として利用する者がいても不思議ではありません。

価格とその根拠を考えるようにして、消費者としては騙されないように気を付けたいですね。

医師たちは、自分を科学的な人間、つまり、答えを見つけるために現代医療の最高の科学技術に目を向けるべき人間と考えるよう訓練されている。そのため、自分の仕事にプラセボ効果による健康増進が含まれていると認めるのは、たとえ自分の胸のうちで思うだけでも耐えがたいことだろう。

周りの医者は確かにこの考えのものが多い気がします。

僕はプラセボ効果を自在に使えるようになれば、それはそれで医師の実力だと思います。

標準的な医療から外れていたら論外ですが。

そして、プラセボ効果を上げるためのヒントも記載されていました。

プラセボ効果を最大にする要素:気泡、表面の泡、薬っぽい色、大げさなうたい文句

プラセボで最も肝心なのは自己暗示だ。

不正の心理

十戒
あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
安息日を守ってこれを聖別せよ。
あなたの父母を敬え。
殺してはならない。
姦淫してはならない。
盗んではならない。
隣人に関して偽証してはならない。
あなたの隣人の妻を欲してはならない。
隣人のものを一切欲しがってはならない。

なぜ十戒の引用が入ったかというと、不正が出来る状態で不正をしないようにコントロールするためのヒントであるからです。

十戒を書き出すように指示された学生は、そうでない学生よりも不正をしなかったという実験結果。

それも、十戒のうち思い出せた数には無関係だった。

道徳心のプライミングに「十戒を想起させること」が役立つ、と。

自らを律する助けになればと思い、十戒を覚えてみることにしました。

赤鉛筆を職場から持って帰るのはわりあい簡単だが、お金を失敬するのはかなりむずかしい。

札付きの悪はそうそういないが、共有のものが壊れたままになっていたり無くなったりということが珍しくない理由。

お金を盗む罪悪感ははっきりとある人でも、お金と関係ない形になると、罪悪感が薄れ、不正をしやすくなる。

電子マネーやカード決済が増えてきた昨今、対策をしないと足元をすくわれるという話。

わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である

自分で意思決定をしていると考えるのは、ほとんどそうであってほしいという願望だ

まとめ

ビジネスを一から考えるときに、誰を対象にするか、何を売るか、どう売るか、付加価値の付け方。

あらゆる面で参考になる話が溢れていると感じました。

不合理な人間の悲しい性を上手く利用して、飲み込まれないように気を付けて、生きていきたいと思いました。

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一般内科、消化器内科、救急、脳神経外科、大学病院、関連病院、民間病院。色々な医療現場を経験してきました。 医療×テクノロジーで未来を創造することが夢です。

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