副題:自分を受け入れ、しなやかに生きるためのガイド
著:クリスティン・ネフ、クリストファー・ガーマー
監訳:富田拓郎
自分のことを許せているかと問われたら、どう思いますか?
何も考えずに生きていたら、それほど自分を責めているという意識を持つことはないかもしれません。
何らかの挑戦を前にして尻込みしてしまう、イライラして他人に強く当たってしまうことがある、といった現象の根底に実は自分を受け入れ切れていないことがあるのかもしれないという話であると言われると、思い当たる節が出てくるのではないでしょうか。
もっと些細な、やるべき習慣が途切れてしまう、ダイエットを失敗してしまうといったことにも関わっています。
自分との対話をきっちりせずに何となく進んでも、本心に沿った意思決定が出来るようにはならないと思ったことがきっかけで、この本を購入し、ワークを実践してみることにしました。
自責思考の闇
「自分は平均よりも優れている」と考えている人は全体の80%います。
少なくとも半分近い人は自分の能力を見誤っているということになります。
それなのに自分を責めるのか?最初は不思議に思ったが、「優れているはずの自分」が並、あるいは並以下のことしか出来なかった時に自分を責めて、罵倒し、後ろ暗い気持ちになるという仕組み。
セルフコンパッションのことを知らないと、この時自分を責めて、もっと厳しいことを自分に課して、当然の如く失敗して自己批判に耐えられなくなる。そこから目を逸らして問題と向き合うこと自体を辞めてしまう。後ろ暗い感情を秘めたまま。
マインドフルセルフコンパッションの実践
自分のことをちゃんと認めて、感情的にも共感して、受け入れて、許すのがセルフコンパッション。
正確に言うと、自分への優しさ、共通の人間性、マインドフルネスがセルフコンパッションの3要素となっています。
最初に必要なステップは、自分の心の在りようを知ること、気付くことです。
マインドフルネス瞑想も、この気づきを促す効果があります。
瞑想は既に習慣にしていたので、この導入はスムーズに行きました。
気付いた自己批判の気持ちを「責めちゃいけない!」と捻じ曲げようとしてもたいていの場合逆効果になります。
そういう気持ちを持つことも仕方ない、と受け入れます。
それが気持ち悪い気がして抵抗感が出るときは、その当事者が自分ではなく親友だったらどう接するか想像してみることが勧められていました。
紙に書いて、自分に対する言葉と、親友に贈る言葉を見比べると、自分に対して厳しすぎることに気付くことが出来ます。
甘やかすつもりではないけれど、厳しすぎるのではないか。自分も人間として認めて然るべきなんじゃないか。
フラットな立場に戻すことが大切です。
Kanchanの自己批判
自分の場合は、習慣化失敗の例が思い当たることでした。
読書とか、勉強とか、運動とか、続けられているうちは良いのですが、時間がなかったり気が向かなかったりして、1日や2日出来ない日が出ることがあります。
その翌日再開できれば習慣は途切れないのですが、「できなかった自分」がダメだなと、がっかりしてネガティブな気持ちになると、その習慣とネガティブな感情を結び付けて、何となく避けるようになってしまう。
なるべく感情が浮かばないように「避ける」行動をするので、表に出にくく無意識的にやらなくなって、いつの間にか3日坊主だったという事実が残り、自己嫌悪感がうっすらと残る。
セルフコンパッションを使った対策はこうです。
自分への優しさ:ミスしたことに対して自分を責めるのを止めること、完璧でいなければいけないという考え方を手放すこと、ありのままの自分を愛し、受け入れること。
マインドフルネス:習慣が続かなかった自分がダメだと思ってしまったことに気付けた。完璧主義的な傾向があったかもしれない。グズとか、口汚い言葉で罵ってしまっていたかも。
共通の人間性:習慣を定着させるのは誰にとっても難しいこと。出来なかったことは何も特別にダメだからという訳ではない。罪を犯しわけでもない。また明日から出来ることを頑張っていけばいいさ。
自己批判対策、不快感のモニタリング
自己批判は「批判していないとダメになってしまうという不安や恐怖」であったり、「自慢することを抑制される家庭環境で育ったことで根付いた思考の癖」であったり、個人個人によって様々な要因があると思います。
実践してみて、考え方を変えるというのは大きなことだなと思いました。癖が抜けるには時間がかかるので、自己批判を認識して、自分の悪い思考パターンを書き換えていく習慣が必要だなと思いました。
考えだけではなく、よく研ぎ澄ませてみると身体感覚にも不快感が現われていることを自覚することが出来ると思います。
強いストレスを感じた時なんかに、僕の場合は胸の奥のあたりにじんわりと不快な感じが広がったり、頭にモヤがかかった感じを自覚することがありました。
思い出してみて、その感じる部分に手を当ててみる「スージングタッチ」というシンプルな方法も効果がありました。
痛みや不快感を手を当てながらよく観察してみたり、深呼吸してリラックスしてみたりすると、少し和らぐのを確認できたりもします。
苦痛=痛み×抵抗
苦痛は痛みと抵抗の掛け算で決まるという瞑想指導者Shinzen Youngの公式もなるほど!と思いました。
痛くても、苦しいかどうかは人それぞれ。
痛みに抵抗すればするほど、さらに痛みが増す。
痛みを否認して、問題について考えずに、いずれ消えて欲しいと思うこと、抑え込もうとすることは、その負の思考や気持ちを対策できないだけでなく、より強固なものにしてしまうことでしょう。
苦痛を認識して感じるとともに、自分にやさしくすること、自分の必要としていることに注意を向けることが、解決に向かう糸口になる。
苦しいことから時に離れることは大切ですが、離れてばかりいては乗り越えることは出来ない。
転んでもただでは起きない精神で、今苦しんでいる人には、より強く、より優しい人になっていってもらいたいものです。
慈悲の瞑想と自己省察
慈悲の瞑想、自分の人生のディープニーズを探ることも、胸に刺さるものでした。
慈悲の瞑想というのは、
大切な人が、健康で安全にいられますように。
大切な人が、心穏やかでいられますように。
大切な人が、幸せでいられますように。
と唱える瞑想で、スピリチュアルっぽいのですが短時間で強力な効果の得られる瞑想としてその地位を確立してきているものです。
「大切な人」を、「自分」に置き換えて、慈悲の心を培うというステップを経て、何か心に響かないなと思ったら、
~~~でいられますように。を自分に刺さるフレーズに変えるというもの。
自分の心からの欲求を探す、面白いワークです。
自分の場合は、
大切なことだけに時間を使えるようになりますように。
お金持ちになれますように。
自分と周囲を幸せに出来ますように。
というのがしっくりくる言葉でした。
時間を大切にすることは、命を大切にすること。
お金はそのための道具。
最近の価値観は、そこに落ち着いてきました。
また定期的に自己省察はしていきたいと思っていますが。
その他
自分の中で恥に思う感情と向き合うワーク
人間関係で感じる怒りと向き合うワーク
ポジティブ感情を味わい、感謝するワーク
マインドフルセルフコンパッションを続けていくことについて考える。
こういったワークも感情安定力を高めるのに有効だと思いました。
身近な人間関係で感じた怒りを怒りとしてぶつけるのでは無くて、抑え込んで黙りこくってしまうわけでもなくて、相手が受け入れやすい形にして穏やかに場面・手段を選んで伝えるというのは、アサーティブコミュニケーションにも通じるスキルで本当に大事だと思います。
ワークを終えて感想
全24章あり、1日1章を課題にしてじっくりと取り組んできた1か月でした。
「自分を責めないで済む環境作り」を頑張って進めてきただけで、自己批判しない思考になっていたわけじゃなかったということに気付いたのが大きな収穫でした。
意外な自分を発見できて、より深く人生を生きることが出来るようになる本だと思い、紹介させて頂きました。