Kanchan(@kanchanblog)です。
臨床をやっていると時々「若い医師・研修医に診てもらいたくない人」に遭遇します。
研修医~専攻医初期くらいの本当に「若い医師」だった時は、未熟で申し訳ないですね~と思っていましたが、
専門医になって冷静に考えてみると「損しているよな」と思います(彼らが)
理由は3つ
1つ目は「若い医師」の診療レベルは平均と同等か、少し優れたレベルになるから。
経験が少ない若い医師には、相談役になる指導医が普通の病院であれば居ます。
対応が1人で完結しているように見えても、自信がなかったり気になることがあったら指導医に相談して、最低でも2人の目で確認されていることが殆どです。
問題のある若手医師がいることもありますが、周りが目を光らせているのでそういう医師に任せきりになってしまうことは少ないと思います。
手技も難易度の低いものから独り立ちしていきますし、シミュレーター、教科書等で練習してから実践が始められる環境のところも増えています。
若い医師に診てもらうと、こなれたベテラン医師がサラっと診るより寧ろ安全性・正確性の高い医療が受けられるので、その機会を自ら拒絶してしまうのは勿体ないと言えます。
2つ目の理由は、そう言う人が診てもらいたいと思う経験豊富な医師にも未熟な時期があったということから目を背けていることです。
若い時期に出会った患者さんとの出来事から多くを学び、成長してきた結果、今があるということ。
将来の名医(=今の若手)に貢献したくはないけど、名医の恩恵を受けたいと言っているのと同じことです。
「動物実験に反対だけど、(動物実験のお陰で発展してきた)医学の恩恵は受けたい」みたいな。
この利己的な御都合主義に違和感を覚え、悪い印象を抱く人は少なくないでしょう。
横への伝聞速度が速い組織である病院で、「若い医師に診てもらいたくない」と言うことは、損だと言えます。
3つ目は、「自信満々な医師」にハマりやすいこと。
「若い医師に診てもらいたくない」意図には、若さだけではなく、「自信なさげに接して来られると不安」という側面もあると思います。
で、自信満々な医師に会って、「良かった。安心」となってしまうかもしれません。
ダニング=クルーガー効果と言って、初心者が少し物を覚えて初級~中級者くらいになったあたりに一度自信を持ちやすい傾向があります。
「自信曲線」は中級者から上級者に向かう過程でミスや勉強の範囲外のことを数多く経験する中で偽りの自信は打ち砕かれて低下し、真の自信を身に付けていきます。
自信満々な若手は、偽りの自信に満ちた「イキリ」専攻医かもしれません。
ミスが起こりやすいのもこの時期です。「自信なさげな医師」よりはヤバいと思います。
こういう医師に身の程を知る経験をさせるのも大切なことではありますが、それはまた別の話。
こうして考えてみると、若い医師に診てもらうのも悪くないと思えませんか。
では、また。