Kanchan(@kanchanblog)です。
資産管理のためのマイクロ法人を作って一年が経過しました。
一番目立つメリットは、社会保険料の削減ですが、法人には設立にも維持にもコストがかかり、単純に社会保険料の減額分が「得をした」と言えない関係になっています。
今回は法人の節税効果を具体的に計算して、どういう人にお勧めできるスキームか考えてみたいと思います。
マイクロ法人による変化
法人にかかる費用
法人の設立に、株式会社では約20万円、合同会社では約6万円最低でもかかります。
それは一回きりなのですぐ回収出来ますが、維持のために(赤字でもかかる)法人住民税7万円/年、税理士報酬20万〜/年はかかります。
これが節税分で賄えるかどうかが分かれ目になると言えます。
社会保険料の減額
健康保険料と年金保険料を合わせて社会保険料と言います。
支払う義務があるお金なので、実質税金です。
状況によって金額が変わるのですが、ここでは扶養家族が2、3人居て、年収1000万を超えていて、国民健康保険料が上限の104万(40歳〜)/年に達してしまう世帯を想定します。(この上限額は引き上げが続いています…)
国民年金保険料は前納を駆使しても1人19.5万/年、夫婦なら39万/年です。
143万円がどこまで下げられるかがポイントになります。
結論、26万円まで下げられます。
役員報酬の設定額がポイントで、月収63000円未満は一律で社会保険料は最低額に抑えられます。
扶養家族ということで申請すれば、夫婦も子供も家族合わせて1万千数百円(地域による)になります。ちゃんと健康保険証も送付されてきます。
個人の側からは1万千数百円ですが、法人負担分も支払う義務(会社の有り難みが実感出来ます)があるので2万2千円/月で、約26万円/年となるわけです。
この差額117万円がまるまるお得というわけではありません。
社会保険料は社会保険料控除に全額算入できるからです。
143万払っても、所得税のところで47.6万(33%)、住民税で14.3万返ってくるような計算です。
法人負担分を払っても「個人で払った額」だけが控除対象になるのでマイクロ法人の場合、返ってくるのは個人負担13万の43%(所得税+住民税)で5.6万となりました。
役員報酬にかかる所得税
役員報酬をいくらに設定するかちょっとした議論があるのですが、5万円位が良いかなと思っています。
社会保険料を払ったら消える月12000円は最低限ですが、あからさまになります(あ、節税目的ね~と分かります)。
給与所得控除の範囲内で収まる月45000円(年55万以下)がいいと言う人もいますが、マイクロ法人の他に大きな所得がある場合関係ありません。
「甲欄計算」で、源泉徴収なしで良い88000円未満が事務的に楽です。扶養家族がいればもう少しあげても源泉徴収なしは可能です。
でも確定申告で最終的に合算した所得に所得税がかかってくるので、5万円止まりにしています。
それでも給料+60万円/年で、所得900万(年収約1200万)を超えていると所得税20万(33%)・住民税6万(10%)かかります。
「決算書を整えるための費用」と思わなければやっていられません(笑)
iDeCoの掛金上限が減額
国民健康保険料の1号被保険者である場合はiDeCoの掛金上限は68000円/月、81.6万円/年でした。
厚生年金に加入したということで、この上限が23000円/月、27.6万/年に減らされます。
この掛金は全額所得控除にして、所得税が減らせます。
そして、60歳以降に年金として積立額+運用益を優遇税制を使って受け取れます。
受け取りまで考えると非常にややこしくなるので無視します。
この一年の話で言えば54万円現金が残せて、所得税18万(33%)、住民税5.4万(10%)増えてしまうということですね。
手残り現金の増加
ややこしくなってきたのでまとめます。
23年度 | 国民健康保険(所得税33%) | マイクロ法人(所得税33%) |
社会保険料(≧40歳) | 143万 | 26万 |
社保控除減額による増税 | 0 | 56.3万 |
役員報酬による所得増税 | 0 | 26万(減額可能) |
iDeCo減額による増税 | 0 | 23.4万 |
iDeCo減額による負担軽減 | 0 | -54万 |
法人維持費 | 0 | 約30万 |
合計 | 143万 | 108万 |
真面目に考えてみると、社会保険料が下がった分、他のところで取られていてそこまで大きなプラスにはならない(+35万)ことが分かりました。
所得税率が上がると、所得増税となる額が膨らみ、所得税40%(+住民税10%)では増税額の合計が123万円となり、マイクロ法人の節税メリットは+20万円程度となってしまいます。
所得税が増える分もありますし、法人登記で登録免許税を支払っていたり、法人の維持費で法人税やら税理士報酬等にかかる消費税やらが出現していて、結局税金を納めることになっているわけですね。
税金の仕組みは頭がいい人が考えただけあって、よく出来ていると思います。
まぁ、役員報酬を12000円にすれば20万円浮いて、税理士契約せず自分で帳簿付けと決算申告すればもう20万円位浮かせられますけどね。
高額の社会保険料だけが気になった扶養がいない医師であれば、国民健康保険→医師国保への変更などで保険料だけ下げれば十分効果が得られるかもしれません。
扶養家族が多いと、医師国保の家族会員の保険料が嵩んで国民健康保険と大差なくなってしまいますが。
マイクロ法人に向いている人は?
法人を作る事務作業の手間は、確定申告が可愛く思えるほど、煩雑で膨大だと感じました。
手間を惜しまずに法人の設立が出来ることが、このスキームのための最低条件となります。
あとは、損得勘定で合理的に判断が出来る人。
制度変更の情報をアップデートし続けられる人。
税金に関して裁量が欲しいと思う人。
社長になってみたい人w。
上記に当てはまる方々は向いているのではないかと思います。
常勤医など会社員の方はそもそも出来ないので御注意を。
自分の場合、国保をノーガードで払い続けるよりも裁量が増えるので作ってみました。
不動産投資が一歩前進するきっかけにもなりましたし、作ってみて良かったなと思っています。
税金を問答無用に取られるだけじゃなく、どの人(税理士、司法書士、銀行、市町村等)に支払いたいか選択できる余地があることは良いことです。
頑張っている人、誠実な人に金銭面で報いることで喜んでもらえるのは、誰がどう使っているんだか分からない「国」に振り込むより有意義に感じられます。
「箱が出来ると埋めたくなる効果」で生まれる事業所得もあると思います。
参考にして頂ければ幸いです。