Kanchan(@kanchanblog)です。
久々の読書感想です。
「時間」に対する深い洞察がなされていて刺さる話が多かったので是非取り上げたいと思いました。
時間を意識出来るようになったのは人類史上では最近のことです。
もともとは日が昇り、沈むまでの間に生きるために必要なことを繰り返していれば終わってしまう人生で、時間について考える必要はありませんでした。
文明の進歩によって、他人と「時間」について共有する必要が出てきました。
そして、近代になって生産性が上がり「自分の時間」を持つことが出来るようになりました。
労働者の権利が守られるようになり、生産性も上がり、余暇時間は確実に増えています。
しかし、「時間がない」と感じる人の割合も増え続けています。
何故そんなことになっているのか、どうすれば解決できるのか、が本書で語られているメインテーマです。
私自身時給労働である医師バイト収入がメインとなっていて、「サイドFIRE医」をアイデンティティにしてみたり、休みを「強制」してみたり、時間に対する感覚改善の為に試行錯誤した経験があったため本書を手に取りました。
見事に刺さる内容が多くあり、深い学びがあったのでシェアしたいと思います。
時間に対する誤解
「完全に計画通りに時間をコントロール出来ればもっと良い世界が待っているはず」と思ったことがある人は多いかと思います。
しかし仮に効率が上がって時間内にタスクを全てこなせるようになっても、更に多くのタスクが積まれるだけで、幸せな余裕のある世界はいつまで経ってもやっては来ません。
「生産性」に取り憑かれて沢山のタスクをこなしているうちは、能力の限界、小さな不確定要素、時間の有限性と向き合わなくて済む側面があります。
手頃なタスクに「逃げ」ることで、重大なミッションに本腰入れて取り掛かることも減ってしまいやすいです。
重大なミッションは何時間も考え込んでしまって、一見何一つ進んでいないように見えることがあります。
「生産性人間」にとっては敗北そのものですが、そういう深く考えた時間が本当にやりたいことを前進させるための道になっていたりすることが少なくないですからね。
生産性や時間管理は無視出来ませんが、至上命題のように考えてしまうとかえって視野を狭めてしまい勿体ない結果にしてしまうことがあることを胸に留めておく必要があると言えます。
人生の時間は有限であること
人生80年は4000週間。90年では4700週間。
40歳なら残りの人生は2000週間。
病や事故で唐突に終わることもあり得る。
そう思うと、やりたいこと、大事なことを先延ばししている暇なんてないと思えますね。
でもタスクが貯まっていること、目標に向けて立てた計画が思うように進まないことを考えるとイライラしてきます。
与えられた4000週間をどう使うか、誰と共有するかと考えるのは、感謝や畏怖の感情を育むのに役立ちますが、一方で焦りを募らせることもあり得ます。
思っていたより自由に使える時間が少ないことは、「生産性」に気持ちを向かわせ、時間貧困の罠に足元を掬われることがあります。
「人生の中で何か重大なことをしなければ虚しい人生になってしまう」という考えを棄てること、「宇宙にとって人間一人の一生なんて一瞬で、ほとんどの人の人生は無価値で無意味」と考えることが本書では提案されています。
そう考えると、宇宙や世界や世間からどう見られるかを考えて限られた人生を生きることは、勿体ないと思いませんか。
もっと自分を喜ばせるために時間を使ってみても良いと思います。
時間(人生)の価値を結果で判断する
因果のカタストロフィという言葉があります。
時間を上手く使ったかどうかは常に結果の良し悪しで判断されるという考え方です。
しかし、世の中には行っている最中には結果が出ず、完成した後数年、数十年経ってから評価される(結果が出る)仕事というものがあります。そういった仕事はのちの歴史に残る偉大なものであったりします。
結果をすぐ求める考え方はこういう偉大な仕事を遠ざけることになります。
結果は他者や社会の流行や景気に左右される仕事についても、自分は精一杯やったが結果が出なかったから無価値と断じてしまうことは不幸になります。
「人生の報酬は、その流れの只中にこそ存在する。後になってからではもう遅い」という言葉を思い出してください。
選択することはそれ以外の選択肢を棄てること
長いタスクリストを作っても全てを「こなす」ことは大抵出来ません。
仮に出来たとしても次のタスクリストが積み上がって「安息の時」はやってきません。
なので、やらないことを決めるのが大切です。
タスクリストに優先順位を付けるということです。
優先度を上・中・下に分けられたら、上だけをやることとしてリストアップし、中以下のリストをやらないと決めることを著者は勧めています。
可能性を減らすのは痛みが伴います。
ですが実験で、ある選択を後で修正できる場合とできない場合では、修正できない場合の方がその選択に満足する傾向が確認されています。
覚悟を決めて「満足するしかなくなる」からでしょう。
結婚の時にパートナーが健やかなるときも病めるときも永遠に共にいることを誓うのはそのためなのかもしれません。
制限・制約が加わることで満足・幸せを生み出すことは忘れずにおきたいと思いました。
計画は考えに過ぎない
頭の中で計画を立てることは誰でもあると思いますが、計画通りに行かないことは多いです。
そんな時にイライラするのはなぜでしょう。
自分のせいで計画が倒れたから?
他人のせいで計画が倒れたから?
どうにも出来ないことで計画が倒れたから?
当たり前ですが計画を立てた段階ではそれは自分の考えに過ぎません。
その通りに行って当然と思うのは驕りです。
計画倒れにならないように対応するのは大切ですが、いちいちイライラしないように計画の進み方や他人の動き方について好奇心を持って観察する態度を持ってみましょう。
最近では私の場合、不動産取引で契約や物件に修正が必要な箇所が見つかって思うように取引が進まなかった時に、イライラして「誰の責任だろう」と考え、文句を言ってやりたい気分になったことがありました。
人が関わる取引である以上、予定がズレることはあり得ることを受け入れ、後からミスが見つかって対応に困るより幾らかマシだろうと考えて、関係者の方には労う気持ちが持てるようになりました。
「こうあるべき」という思考は自分に対しても他人に対しても持たない方が楽に生きられそうな気がします。
不快感をそのまま受け入れる
重要なミッションやパートナーとの大事な話など、骨の折れることに取り掛かるのは不快感が伴います。どれだけ考えても他人が首を縦に振らなければ始まらなかったりもします。
パートナーの話を聞くには努力と忍耐と献身が必要だし、内容によっては嫌な気持ちになるかもしれません。
そういう時に、手軽なタスクや簡単にアクセスできる娯楽に注意を向けやすくなってしまいます。
「スマホがあるから会話に集中出来ないのではなく、会話に集中したくないから楽ができるスマホに逃げている。」と著者は言います。
重要な話、仕事を完遂するには、不快感をそのまま受け入れる事が最善です。簡単なことではないですけどね。
スマホを対策する
現代の注意力泥棒の最たるものがスマホです。
「時間感覚」の改善の為にスマホやデバイスを退屈なものにすることが勧められています。
白黒表示になる「グレースケール」が代表格です。
その他にも集中モードの活用、通知オフ、SNSアプリの削除もテクニックとしてあります。スマホを敢えて使いにくくすることによってスマホに使わさせられる状態から使える状態に出来ます。
まとめ
時間について考えることは、人生について考えることだと思っています。
時間の使い方に関する本ですが、大半が「時間に対する心理」について割かれている本でした。
時間は1日24時間、1週間7日間、1年365日でそれ以上でもそれ以下でもありません。
どう使うかは、「どういう考え方をするか」が大事になってくるということなのだと思います。
常勤医の時に比べて圧倒的に自由に使える時間が増えたと思いますが、思うほど時間や余裕が余ってはいませんし、やれることも増えてはいません。
幸福感や満足度も常勤医時代に想像していたよりは低いと思います。
それでも全然高いですけどね😊
今を大切にするマインドフルな生き方をして、折角与えられた4000週間を充実したものにしていきたいと気持ちを新たにできました。
この著者(オリバー・バークマン氏)に感謝です。