更新頻度が油断すると減ってしまうことを実感し、反省しています。
完璧主義的になればなるほど、文章の構成や理屈がしっかりしていなければ書けない、と更新自体が億劫になってしまい、ブログから遠ざかってしまいます。
それが原因だったのだと思います。
最近ちょっとした変化がありました。
古巣の病院の管理医師の先生と、バイトで行った際に話す機会があり、「研修医を指導する医師が足りておらず、暇な時間を使って研修指導に携わってくれないか?」とオファーを頂きました。
参加しようとしていたイベントは、コロナ禍で軒並み中止となり、求人も一斉に減っていて、暇を持て余していたのと、「面白そう!」と思えたので、承諾をして、研修指導に携わることになりました。
その病院の研修指導が独特で、人手が掛かり、内情が理解出来ていないと務まらない役割だったため、非常勤でありながら研修の経験者である自分にお鉢が回ってきた訳でした。
導入期研修
医師になって最初の半年間、医師として基礎的なことを徹底的に教える導入期研修という仕組みで動いています。
問診、診察の仕方、鑑別診断の考え方、検査計画、治療計画の立て方、患者・家族との人間関係の作り方、病状説明の仕方、他科コンサルテーションの仕方、関係各所との連携の取り方・・・
主治医として働くために必要な基本的なことを研修医が主体となって実行していきます。勿論最初は何もできませんから、リスクヘッジのために付きっきりで見て、相談に乗ってあげる人が複数必要になります。
指導する側が外来しながら、救急しながら、検査しながら、往診しながら、では相談できず放置になってしまう時間が出来てしまう。
しかし、病院も上級医から通常業務を除去できる程余裕などあるはずもありません。
研修医にある程度以上の経験があれば、放置される時間に自分で考えて動き、相談できる時間に相談するというタイムマネジメントを任せることも出来るようになります。
医者になりたての研修医では、放置されると何も出来ないまま時が止まってしまうが如く、やるべき仕事が指導医のチェックの時までそのまま残っているという場合があります。
他の病院では「やるべき仕事」の一覧や過ごし方、要領については横のつながりで先にローテートした人から聞いたり、すぐ上の研修医、後期研修医から聞いたり、キレやすい要注意人物を警戒し合ったりして、「研修医ライフ」を作り上げていたように思います。
その点、甘やかしすぎと思われるかもしれませんが、当院の導入期研修ではその時間も作らないように、病棟に誰か相談できる人がいる体制を組もうとしているため、人手がいくらあっても足りない状態でした。
研修医にそれだけ時間と手間をかけるのは、力を入れている証です。
3~5年目の後期研修医が初期研修医を直接指導し、その上に経験年数10年超の指導医が居て、指導を総括する仕組みになっています。
僕は指導医と同じ目線で治療方針について包括的な視点で見ながら、研修医に直接お作法を教えたり、相談に乗ったりする役割で、病棟で見て回りつつ待機しています。
患者を直接受け持たずに病棟を見ていると、診療の本質について考える時間が出来てきます。
「何をやったらいいか分からない」という発言を研修医から聞いた時は、担当患者さんについて100%理解していて、鑑別診断も十分挙げられているのか、それぞれの鑑別診断について十分説明できるのか、診断は確定出来るのか、合併症、検査異常は何もないのか、コストベネフィットの合う検査・治療は必要かつ十分に提供できているのか、いつでも退院できるのか、出来ないとすれば問題は何か。聞いてみるとNoの嵐。
問い詰めるようになってしまいましたが、「何が分かっていないのか分かっていない状態」というのはこんなもんなんです。
自分も昔はそうでした。
そう研修医に問いながら、自分の診療がどのレベルで「妥協」してしまっているのか?振り返ることにもなります。
指導医というものは偉そうなことを言っておきながら、出来ていないものなのです。
研修医も人間。それも、人をよく観察するトレーニングを受けている人間です。
指導医が自分を棚に上げて言っていることは、少しの間観察すればバレてしまうのです。
そして、時間をかけて経験を積み、仕事も増えていく中で、「やらなくても回る仕事」を見つけ、手を抜くようになっていくのだと思います。
ただ、「出来なくて、あるいは知らなくて、やらない」のと「出来るけど、やらない」の間には壁があります。
診断に行き詰った時、人に助けを求められる環境にいるとは限りません。自力で難問に向き合わざるを得なくなった時、問診・診察・最低限の検査で正解に近づく術を持っていることは、人の命を左右します。
転院搬送をお願いするにしても、診断して送るのか、よく分からないけど重症っぽいから送るのでは、病院の格に関わる話になります。
哲学的なことを考えたりもしながら、つくづく「人に教えるということは、自分の理解度を確認するということであり、学ぶということだ」と思います。
真面目な子たちだけに、どんな医師に成長していくのか、楽しみです。
コンサルタント
病棟管理に毛が生えたような非常勤の仕事と言えば、それまでですが、研修医を育てるということを通じて、病院を変えたいと思いました。
顧問契約という形にしてもらって、研修に関することだけではなく、病院の仕組み作りについてアドバイスをさせてもらうことにしました。
「若手の一人」として在籍していた時には変えることが出来ず辞めてしまった所ですが、別の視点から病院の人材育成の仕組みに切り込んでいきたいと思います。
慢性的な人手不足で、疲弊している人が多く、簡単に採用し、短期間で辞めていくことの繰り返し。
非常勤医師割合が高く、組織として安定しない状態が、以前から続いていて、経営が改善していないようでした。
研修医に必要な臨床医としての基礎的な知識の復習をしつつ、マネジメント、心理学についての勉強もしながら、成果を出せるように、新米コンサルタントとして動き始めたのでした。
