仕事

「マネージャーの最も大切な仕事」を読んで芽生えたもの

著:テレサ・アマ―ビル、スティーブン・クレイマー

人を使うことより、人に使われること、雇われることの方が多い人生だ。

人の上に立つ人のマネジメント能力、個人の性格、インセンティブによってモチベーション、やる気は左右されると思っていた。

時間が経って、「慣れ」が出てきて、モチベーションのケアがされなくなってくると、やる気が無くなってくる。そういうもんだと思っていた。

医師の世界では、勤務先への平均勤続年数約5年というデータを見たことがある。

医局人事で数年ごとにローテートする人が居る一方、小さな病院にずっと居座り重鎮のようになる人もいる。

得てして平均は実態を表していない。モチベーションを測る指標として離職率や平均勤続年数は有用かというと、必ずしもモチベーションが低下して辞めることばかりではなく、関係はあるが全てではないというところか。

やる気はどうしたら出るのか、引き出せるのか。人との関わり方について考えていた折、表題の著書を読んだ。

モチベーションについてこれほど詳しく説明された本は読んだことがなかった。

科学的な手法で解き明かされており、経験談が集められたような本とは一線を画す内容だった。

インナーワークライフ

インナーワークライフを豊かにすること。これをマネジメントの目的にすると、職場は上手く回りだす。

インナーワークライフとは、職場でのあらゆる出来事から生じる感情のこと。認識と感情とモチベーションの相互作用でどういう方向に向くか決まってくる。

「進捗」と「触媒」と「栄養」の3つの要素がこの順に大きく影響してインナーワークライフを左右する。

インナーワークライフの向上は個人の幸福に結びつき、パフォーマンスを上げる。創造性、生産性、コミットメント、同僚性が向上した。従業員を幸せにし、且つ生産性を上げることが出来たら、離職率も下がり収益も上がり、経営者としては言うことなしの状況になりそうだ。

進捗の法則

進捗は、仕事が「前に進んでいる」という感覚。些細なタスクのような仕事ではない。

その個人が意味を感じられて、やりがいのある仕事である必要がある。

このやりがいのある仕事が前に進んでいるという感覚が得られた日には進捗が感じられて、モチベーション、ひいてはインナーワークライフが向上する。

この進捗の感覚がモチベーションに直結するという進捗の法則は95%のマネージャーが重視していなかったということ。

それ以外の触媒、栄養のファクターが混在するため勘違いしたり見えにくくなってしまうのかもしれない。

触媒ファクター

進捗の次に影響を与える要素が触媒ファクターだ。触媒ファクターは仕事をサポートする出来事である。具体的には、

・明確な目標の設定

・自主性の尊重

・リソースの提供

・適度な時間の提供

・仕事への手助け

・問題と成功からの学習

・活発なアイデア交換

人から与えられるため混同してしまいそうなのは、人間関係の問題。

人間関係が悪ければ上記も得られにくいような気がする。人間関係に関する要素は次の、栄養ファクターにまとめられている。

仕事に対するモチベーションに関して影響が大きいのは、仕事をサポートするリソースが整っていること。

勿論、人間関係が良ければサポートも受けやすいという点で無関係ではないだろう。

栄養ファクター

人間関係がインナーワークライフに作用する要素を栄養ファクターという。

栄養ファクターの具体例

・尊重

・励まし

・感情的サポート

・友好関係

これまでの職場を振り返ってみて、思ったのはこれらの触媒ファクター、栄養ファクターが少なかったところが多いということ。

少なくても、あればプラスにならないのかな・・・と疑問に思ったが、答えは、マイナスということ。

どちらかというとモチベーションにネガティブな影響を与える要素について、の方に興味を持つ人は多いと思う。

マイナス要素

進捗、触媒、栄養の3つの要素には対となるマイナス要素が規定されている。

障害、阻害ファクター、毒素ファクターと名付けられている。

障害は、中心となって取り組んでいたプロジェクトが中断されて再開の見通しが立たない状況、ずっと頑張ってきたことが水の泡になってしまった状況、仕事を取り上げられて単純労働を命じられるといった感じ。障害が幸福度を下げ、フラストレーションを感じさせる強さは、進捗よりも強いと言われている。

阻害(触媒のネガティブ版)は曖昧不明確な目標、自主性の欠如、リソース不足、時間がない、サポートがない、失敗を罰したり問題や成功から学びを得るチャンスを見出すことを怠る、アイデアが出ないなど。

毒素ファクターは無関心、感情無視、尊重の欠如、励ましの欠如、敵対関係。これも栄養ファクターがないことを示すものが多い。敵対関係以外は、ポジティブな人間関係に必要な要素がない状況を示している。

触媒ファクターや栄養ファクターが得られないことはゼロではなくマイナスで、ポジティブよりもネガティブの影響の方が強いということは肝に銘じておかなければならない。

ケアを忘れると、尊重されていない、軽く見られていると感じて気持ちが離れていく。

集中力が減り、幸福度が低下し、モチベーション、生産性にマイナスの影響が出てきて、離職率も上がる。これは組織を脆弱にすると思う。

ネガティブな要素があるのなら、それを取り除くことを優先して行った方がインナーワークライフの向上には繋げやすいと言える。

進捗のチェックリスト

以上を踏まえて、マネージャーが日々チェックするべきは、進捗と障害があったかどうか。触媒ファクター、栄養ファクターをチェックして、現状を認識し、行動プランに落とし込むことだ。

  • やりがいのある仕事に対する明確な目標を持っていたか、混乱はなかったか。
  • メンバーは自主性が与えられていたか。
  • メンバーは必要なリソースを持っていたか。
  • 必要十分な時間が与えられていたか。
  • メンバーから求められたサポートを提供することが出来たか、互いに助け合うように促すことが出来たか。
  • 成功や問題から教訓を引き出すためにチームと話し合ったか、心理的安全性を確保できたか。活発なアイデア交換をサポートできたか。
  • メンバーをプロフェッショナルとして扱って尊重を示したか。
  • 難しい挑戦に取り組むメンバーを励ましたか。
  • 個人的、仕事上の問題を抱えるメンバーをサポートしたか。
  • チーム内に個人的・職業的な友好関係、仲間意識はあるか。

マネージャーのインナーワークライフはメンバーのインナーワークライフとリンクしているということも分かっている。メンバーが満足に働けていると、マネージャーも満足感が高く、幸福になりやすい。

マネジメントに集中していれば自分も幸せになる。もう迷う必要はない。

感想

人の上に立つ可能性のある人は一度読んでおくべき内容だと思った。

人は感情で動く生き物だけど、どう働きかければ感情がどう動くのか、個人差はあれど法則があるのなら学ばないのは損。

やる気がない奴は放っておく=マネージャーがやる気ない

人間関係は鏡のようなもので、相手をどう思っているかは、自分がどう見られるかを反映すると言った先輩がいたが、含蓄のある言葉だなと思った。

優しさと強さは別だと思っていたところはあるが、心理的安全性は立派な強さになるわけで、要は使い方なのだと思った。自発性、安全性、コミュニケーションを育てられるように、意識して接したいと思った。

ABOUT ME
アバター
kanchan
一般内科、消化器内科、救急、脳神経外科、大学病院、関連病院、民間病院。色々な医療現場を経験してきました。 医療×テクノロジーで未来を創造することが夢です。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です