社会人経験がなく、医学部卒業と同時に医者になり、病院での経験を重ねてきた医師が「起業しよう」と思い立った時、どうするか?
起業と言っても、病院や組織に頼らない収入を確立するという意味での自営業的なポジションと、ベンチャーを立ち上げて課題を解決していくという起業(まずこちらをイメージするのではないでしょうか)に分けられると思います。
個人で稼ぐ道
最近では個人で出来る仕事も増えてきてます。
医師の自営業の例としては、
- クリニック(開業医)
- ブログ
- YouTuber
- ライター・作家
- 投資家(法人化も)
このあたりが挙げられるかと思います。
僕が今やっていることはブログと投資(株式・投信・先物)と、平凡な所。貯金しているよりはマシってことで始めた気楽な投資です。
会社の起業という道
ベンチャー企業での起業をするということについてはどうでしょう?
僕自身は、起業志向で常勤医を「辞めてみた」クチです。
アイデアがあれば何でも出来るのが起業の魅力と言いますが、実際アイデアが少しある位では事業化・収益化まで持っていけるほど簡単なものではありません。
どういうプロダクトにするか、どう作るか、どう運用するか、誰と作るか、誰に売るか、いくらで売るか、競合との差別化はどうするか。
いくらでも浮かび上がる問題をクリアして、関係者たちとの調整を済ませなければ、1円も入ってきません。
そして、教えてくれる人などいません。
成功すると分かっている事業があるとすれば、試して成功させてしまった方が早いですから。
初心者を一人あえて挟むのは、起業ビジネス等、それ自体に何らかの目的がある場合が多いと考えておかないとカモにされると思います。
起業・創業は、今ない仕事を作るということ。
組織に属して、やり方を教わって、成長していく一般的なプロセスと真逆なわけです。
起業について調べれば調べるほど、起業というものが分からなくなりました。
ビジネスも素人で、起業・創業についても素人ですから。
具体的な方法論は、分かりません。
だから、目標とするもの、何者になりたいか、という抽象的なゴールから確認することにしました。
目指すもの
ワーキングアイデンティティという言葉があります。
仕事によって、どういう人間になりたいのかという理想像の様なものです。
その理想像を把握していないと、待遇が良い同業他社に転職しても、慣れた頃になって、「なんか違う」と感じてしまうことが増えます。
僕にとっては成長し続けられる人、信頼される人でした。お金も家族もスキルアップも大事ですが、一番優先すべき価値観は「成長」、次が「信頼」で、その中で得られる人間関係から自尊心や幸福感が付いてくるようになると想像できました。
また、人は周囲の環境に影響されて変化します。
起業を志すにあたって、今まで関わることのなかった人との交流の場としてSHIPに入会することにしました。
そして、自問自答を繰り返しました。
- 何者になりたくて、起業家を志したのか?
- 社会を、医療をどう変えたいのか?
- 死ぬときに人生をどう振り返りたいのか?
原体験としては、当直や夜勤は人間がすべきでない仕事だと思ったこと。
当直ありで契約している人は、当直枠の埋め合わせのために当直なしの人以上に酷使され、疲弊して、より早く辞めていく様を救急病院で何度も見てきました。
求人にも当直免除の文言を見かけることが多く、要するにやりたくない人が多いこと。
当直ありの人と当直なしの人とで、不公平感、壁がある感じ。
当直明け勤務の問題はニュースでも取り上げられるようになっており挙げるまでもないでしょう。
集中力が落ち、ミスが増え、同じ作業に余計に時間がかかるようになります。
当直明けの自動車での帰宅途中に交通事故で命を落とす医師もいたりします。
睡眠不足によるストレスは食べ過ぎを促したり、プライベートで友人や家族に攻撃的になったり、自制心を奪うことによる副次的な害もあります。
夜勤をする看護師は日勤のみの看護師より乳癌に罹患する可能性が有意に高いなんて言う研究も。
自分がやりたくないだけであれば、当直なしの契約をすれば済む話なのですが、それだけでは当直にまつわる上記の様々な人間関係の問題、救急の問題、病院の問題は野放しになります。
テクノロジーの進歩で、誰かが解決してくれるのかもしれませんが、それを待ちたくなかった。
「夜勤、当直を減らし、無くす」 これをライフワークにしたいなと思いました。
解決方法も一つではないはずです。
- 当直医水準の判断を自動で行ってくれるAIの開発
- 急がない夜間・休日の救急受診を抑制する啓蒙活動
- 軽症患者の検査・処方の自動販売機の開発
- OTC薬品の拡充による薬局での問題解決推進
- 終末期医療・人生会議を広めて院外での看取りを増やす
- オンライン医療相談の発展
医療には国、病院、消防(救急車)、医療者、患者、家族、沢山の人が関わっています。アプローチの方向もその数以上に考えられそうです。
医師の可能性
医師という専門職は、医療機関では大いに稼げることでしょう。
週3のバイトで年収1000万を超える仕事なんて他にあまりないと思います。
しかし、将来にわたってもそう言えるでしょうか?
病院の集約化や人口減少や医師市場の飽和が起これば、この年収は下がっていくことも十分考えられます。
だからと言って、医師抑制政策を訴えても時代に逆行しています。
医師の地域間の偏在、科ごとの偏在、時間帯ごとの偏在が問題になっています。
大学医局の権力が落ちたから、女医が増えたから、と言ってみても問題は解決しません。
副業を勧められるようになった社会の中で、医療機関でのキャリア一本で、トップになれるわけでもない仕事を続ける事にも閉塞感を感じました。
キャリアチェンジを選択して、自分にしかできないORIGINALな仕事が出来るようにと思い、行動を開始することにしました。
