読書

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」が出来る時代-の感想

著:アダム・グラント 訳:楠木建

名著の多いと言われるアダムグラントさんの著作。一気に読めてしまいました。

あとがきでも書かれていますが、結論がシンプルで分かりやすい、とても良い本だと思いました。

本書ではオリジナリティを発揮するための方法が様々な角度から書かれています。

独自性あふれるアイデアを出すにはどうしたらいいか。

そうしてたくさん出たアイデアから良いものを判断するにはどうしたらいいか。

創造的なアイデアを周囲に認められるようにするにはどうしたらいいか。

どういうチームを組むのが良いか。

こういった内容が分かりやすく解説されており、起業を考えている人新しいアイデアが出したい人変り者と言われることを長所に変えたい人、なんかには特にお勧めの本だなと思いました。

アイデアの出し方

では、創作者が自らのアイデアを適切に評価できないとすれば、傑作を生みだす可能性はどうすれば高められるのだろうか?その方法とはズバリ、「多くのアイデアを生み出すこと」だ。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

考えてみれば当たり前のことかもしれませんが、良いアイデアが出る陰には、そうでもないアイデア、悪いアイデアが沢山あることが、ベートーヴェン(作曲家)やエジソン(発明家)などを例に挙げ示されています。

オリジナリティを阻む最大の障害はアイデアの「創出」ではない―アイデアの「選定」なのだ。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

沢山アイデアが出たとして、そこから成果の出るアイデアを選定するのがまた難しいというのも理解できます。正解のない現実世界で、何が当たるかやってみないと分からないことは多々あります。

どうすれば良いアイデアを判別することが出来るのでしょうか?

アイデアの選び方

世界的大ヒットとなっているハリーポッターですが、最初、作者が出版社に持ち込んだとき、何社も断られたというのは有名な話です。

ある分野の知識を得れば得るほど、その典型に縛られてしまうのだ。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

オリジナリティのある作品や製品というのは、業界の常識に照らし合わせると、受け入れがたいものであることが少なくないのだろうと思います。

人間には様々なバイアスがあり、自分一人で判断すると、自分の作品は優れていると信じやすくなるバイアスが働き判断を誤ります。

その道の専門家に判断を仰ぐと、新しすぎるものは否定されることが多いでしょう。

利害関係のない同業者が最も適切な判断が出来ていたという研究結果があり、それがオリジナルな制作物を判断するカギになるのではないかと思いました。

業界について、知り過ぎていてもオリジナリティが損なわれる。知らな過ぎても、「車輪の再発名」の様に無用な手間をかけて終わってしまうことが増える。

オリジナリティを発揮するとは難しいことだなとつくづく思いました。

起業家の成功に情熱は関係ないという意味ではない。熱意ある起業家は、より短い期間でベンチャーを成長させ、より多くの成功を収めることが出来るという証拠が豊富にある。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

起業に関してですが、起業家に熱意があると直感に従う人を説得する力が増し、短期間での成果が出やすいという話がありました。それは起業家の熱意によって投資家が判断ミスをする可能性が上がることの裏返しであります。

アイデアを周囲に認められるには

独自性の高い人は孤立しがちで、必ずしもオリジナリティが成果に結びつかない。では、どうすれば周囲に認められる可能性が上がるのか。このあたりについても開設されています。

「特異性信用」=「ある集団が求める言動から、どの程度逸脱しても良いかを表す許容範囲」

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

私たちは、現状に異議を唱えようとする立場の低い人物を黙らせようとするが、立場の高いスターの逸脱には目をつむり、時には称賛さえすることすらある。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

これは会社あるあるではないでしょうか。

出来る人と出来ない人が同じことをしても、称賛されるか叱責されるか周囲の反応がまるで異なることがあります。直感的に理解できますね。

ですがスター人材になることは簡単ではありません。多くの場合、既に地位のある人に認められるところから始まると言っていいでしょうが、好みも人それぞれだし、社風なんかによっては難しいこともあるでしょう。

人が人を嫌いになるメカニズムの一つについても明記されています。

「非常に似通っている者同士のわずかな違いこそが、互いのあいだに違和感や敵意といった感情を生み出す原因になっている」

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」が出来る時代-

ビーガンがベジタリアンを嫌っているという話が出ています。似通っていて、徹底されていない存在というのが嫌悪感を高める要素になります。

消化器内科で例えるなら肝臓専門医から、消化器病専門医が肝臓も手を出しているレベルの診療を見て、嫌悪感を示すようなものでしょうか。

では、どうすれば認められるようになるのでしょう。

オリジナルな人が成功するには、「節度のある過激派」になることが必要だ

アイデアのもっとも過激な部分をあいまいにすることによって、実現できそうにないことを実現できそうに見せた

「なぜ」から「どのように」へと焦点を移すと、過激さがやわらぐ。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

「特異性信用」を高めてからアイデアを出す

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

このあたりが参考になるのではないでしょうか。

どのようなチームが良いかというと、多様性のある人材が集まっていることが一つの条件になります。リーダーの意見に賛成する人しかいないと、リーダーは自己満足に浸れるのかもしれませんが、チームとしては弱く、外的環境の変化に抗えず没落していくケースが枚挙にいとまがありません。

多様な人材が集まり、それぞれが反対意見も含めてしっかり主張することができ、同じビジョンに賛同している、というのが理想的なチームとして紹介されていましたが、かなり難しい組織づくりになるのだろうなと思いました。

リーダーが自分を批判する人物を重用する例は、スティーブジョブズも挙げられていますが、そんな組織は日本にまだまだ少ないんじゃないかと思いました。

そんな病院は少なくとも見たことありません。

説得の手法

相手の行動を説得によって変えるための戦略としては、リスクを回避したがる性質を利用するのが良いのではないかと書かれていました。

「新しい行動を相手が安全なものと認識するか、リスクが伴うものと認識するかによる」行動が安全だと相手が思うのなら、行動によって生じうるすべての良いことを強調するべきだ。そういった利益を得るために、相手はすぐさま行動を起こそうとする。だが、行動にはリスクが伴うと考えている場合には、この方法は役に立たない。そのため、現状を揺るがし、行動を変えないことで起きる悪いことを強調する必要がある。行動しなければ確実に損失がある場合は、リスクを冒すことに魅力を感じるようになる。

ORIGINALS -誰もが「人と違うこと」ができる時代-

さて、質問をします。

A: 5000円を必ずもらえる。

B: 1/2の確率で1万円貰えるが、1/2の確率で全くもらえない。

AとB、どちらを選択しますか?

この場合、Aを選択する人が多いと思います。

では次の場合はどうでしょう。

一律に一万円もらった後で、

A:  5000円を失う。

B:  1/2の確率で1万円を失う。

AとB、どちらを選択しますか?

状況は全く同じはずですが、不思議とBを選ぶ人が多くなります。

人間は利益に注目するとリスクを避け、損失回避に注目するとリスクを負ってでも損失を少なくする可能性に賭けやすいという性質があります。

この性質を上手く利用すれば説得して相手の行動を変えられるかもしれないというわけですね。

まとめ

アイデアはたくさん出すこと。その中から独自性あふれるアイデアが出てくる。

そうしてたくさん出たアイデアから良いものを判断するのは中立的な立場にある同業者の意見を聞いてみることが有効。自分で判断する場合は、バイアスがあることを知りつつ、時間をおいて2回以上考えるのが良いでしょう。

創造的なアイデアを周囲に認められるようにするには「特異性信用」を高めること、アイデアの最も過激な部分を曖昧に抑えて、節度ある過激派になること。

説得するには、利益に注目する視点、損失に注目する視点の両方を持ち、使い分けると良い。

素晴らしい知見の数々に感動すらできるビジネス本でした。

繰り返し読んでも、また新しい発見のあるものだと思います。

アダムグラントさんの他の著書にも興味が湧いてきました。

参考:ORIGINALS-誰もが「人と違うこと」ができる時代-

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一般内科、消化器内科、救急、脳神経外科、大学病院、関連病院、民間病院。色々な医療現場を経験してきました。 医療×テクノロジーで未来を創造することが夢です。

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